海外出展で予想外のトラブルに見舞われたら -France/Paris編-
はじめに
海外で作品の出展経験がある方は、一度は何かしらのトラブルに遭遇したことがあるのではないだろうか。私もその1人である。
電気を使う作品ならば、電圧が足りなかった、むしろ過剰すぎた、作品の素材として自然の天然素材を使った場合は、空港での検疫に引っかかり持ち込めない、ガラスを使ったプロダクトなら、輸送中のトラブルで破損してしまった、展示会場でのアクシデントで破損してしまった等など、どんなに入念に準備をしても、何かとトラブルは発生する。
今回のまとめは、どちらかと云うと、準備不足や想像力の欠乏によるトラブルといってしまえば終わりなのだけども、意外と同じ経験しているデザイナーが多いので、どんなトラブルがありどう対処したのかを文章として残しておきたい。
ParisDesignWeek2017 / Masion&Objetでのハプニング
9月上旬にフランス・パリで開催されたParisDesignWeek2017 / Masion&Objetの若手向けの企画展、Meet My Projectでの出展のためにパリへ向かった。
パリでの展示会場は11区のロケット周辺。展示会場周辺は、割りとカフェやレストランが多く、観光客というよりかは地元の人たちで昼間も賑わっている。
凱旋門やシャルゼンゼ大通りのような「ザ・パリ」な地区からはだいぶ離れているため、デザインウィークを回る側からすると行きにくいのではという印象。
それはさておき、作品の設営をすべく展示会場に向かった。プロダクトの事前郵送は無し。照明は持参した。割れ物なので、宿から会場まで慎重に運ぶ。街中はテロ対策の厳重警戒態勢。ダンボール箱を片手に地下鉄に乗り運ぶまでに何度もパリ市民に不審がられてしまったがなんとか会場に辿り着く。
会場の中はそこまで広くはないが、空間としては天井突き抜けのコンクリートうちっぱで通り沿いも全面ガラス。作品を飾るには申し分の無い空間。会場に入ると、急ピッチで現地スタッフが会場準備を進めていた。
自分も作品設営をすべく、手荷物として運んでいたダンボール箱を開けてみる。
まずは照明のガラスを確認。梱包材を名一杯詰めていたため、傷一つ無い。ひとまずはガラスの破損が無いことを確認できて安心する。
次に泡の制御とLED駆動モジュールを確認する。外観を見たところ回路の破損は無さそうだが、動作確認をしなければな。コンセントタイプをフランスのC型にするため、コネクタをつける。
そして、小型医療用ポンプから空気を送るためのガラス棒を取り付けるために、別に梱包していたガラス棒を取り出す。・・・・・え、、、なんかガラス棒短くないか…..まさか、(汗がじわじわと吹き出す)
あるあるトラブル1:作品のピースの破損
250[mm]のガラス棒がバッキバキに破損。持ってきていたアロンアルファでピースを組み合わせるべくも無駄な努力。
何度組み合わせても100[mm]ぐらいの長さになってしまう。なんでだww。
完全に修復できない状態となっていた。本作品、ガラス棒経由で小型ポンプからの空気をシャボン液に送る機構。空気を送ることができなければ、照明のアピールポイントの「泡が生み出す光と影」が一切、見せられないことに。これはマズい。
ミラノの展示では部品トラブルが多かったことから、部品の予備セットは準備していたものの、ガラス棒は予備セットを持っていかなかったのだ。痛恨のミス。さて、どうするか。ガラス棒の予備となるものは… 外径6[mm]のチューブ状のものがあればとりあえずなんとかなる。ガラス棒は日本でも外注しないと手に入れることはできないので、パリ市内のホームセンターにも絶対に売っていないだろう… となると、ストローかシリコンチューブか、アルミパイプか….
少し冷静になり、ガラス棒無しでも動作確認はできるので動作確認を進めることに。ACアダプタをコンセントに刺そうとする。ACアダプタは普通は100-220Vの範囲で対応しているので、変圧器は必要無い想定。MacとかiPhoneも海外では、変圧器での電圧変換が必要無いのと同じだ。だが、念のためACアダプタの表記を確認。
・・・・・え、うそだろ。(さらに、汗がじわじわと吹き出す)
あるあるトラブル2:作品の電圧規格と海外の電圧規格が合わない
作品で使っていたACアダプタは、12[V] 1[A]をつくるアダプタなのだが、まさかのアダプタの電圧規格が100-120[V]を変換するものであった。フランスの電源規格は220[V]なのでこのままぶっ刺すと、回路とともにACアダプタも焼ききれる。2重の絶望に呆然…
せっかくの海外展示なので、ここで諦める訳にはいかない。冷静になるためにも会場から宿に一旦戻り、解決策を考えることにした。ひとまずは、「ガラス棒の代替部品」と「変圧器」を探す必要がある。
パリに東急ハンズがあれば…困った時はGoogle先生だ!早速、Google先生に、「paris diy shop」と聞いてみる。
おお、なんだなんだ、どうやら「BHV(ベーアッシュヴェー)」という東急ハンズ的なDIYショップがあるらしい!!希望が見えた。早速、地下鉄でBHVへ向かうことにした。
余談だが、地理的には、セーヌ川の辺りの市役所・区役所付近の直ぐ近く。ニートラダム橋を渡ればノートラダム大聖堂も直ぐ近く。トラブルに負けずにパリを楽しむことを忘れてはいけないと思いつつ、ノートラダム大聖堂に寄り道♪
BHVは、日本で言う伊勢丹的な百貨店。地下B1フロアにDIYフロアがある。(ここからはかなり焦っていたため、全く写真を撮っていない)印象としては、まさに東急ハンズの工具フロア。品数は恐らくハンズ同等程度だろう。
早速、ガラス棒の代わりになるモノを探す。ガラスは無いとして、ストローか何かしらのビニールチューブか、アルミパイプか..見た目や質感的にストローは無い、チューブも質感的に無い、消去法的にアルミパイプを探すことに。外径6[mm]のパイプを発見。アルミより真鍮の方が質感が良いので真鍮にすることに。お次は、変圧器。よくよく考えてみれば、日本の東急ハンズにも変圧器とか無くねーか。店員に聞く。やっぱり扱い無しとのこと。再度、Google先生。
どうやら家電量販店に行った方がよさげ。そんで行ったのが、「Forum des Halles」内にある家電量販店の「Fnanc」と「Darty」。日本でいるヤマダ的な量販店。だが、しかし… 店員に聞いたら取扱無し。マジカヨ…. 変換プラグは置いているが、流石に変圧器はなさげ。100-220[v]を12[V]1[A]に変換するそんな都合の良いACアダプタは無いか。日本でもネットでお取り寄せor秋葉原ですもんな。
これは困った。もう諦めるか。会場責任者にチャットで連絡。
自分:「変圧器忘れて照明の展示できないんすよ。申し訳無いのですが辞退しますわ。」
責任者:「変圧器なら、会場の近くのホームセンターに売ってるぜ。」
自分:「ええええ、本当ですか!?神」
急いで、教えてもらったお店へ向かう。さすが、地元民は心強い。フランス人って意地悪なイメージ勝手に持ってました。ごめんなさい。皆さん本当に優しいです。
行ったのは「BRiCOLEX」という小さなホームセンター。2Fに家電系が揃っている。ACアダプタ発見。規格を確認する、まさかの12[V] 1[A]ピッタリを発見!奇跡すぎてテンションUP。助かった…
宿に戻り、真鍮パイプとACアダプタを取替えて、動作確認完了。
翌日の午前に照明を吊るしに行き、設営を完了させた。
文章で書くとあっという間の内容だが、この対応でパリ滞在の1日が潰れている。海外展示には、何かしらトラブルがつきもの。事前準備をこれでもかというぐらい怠らないことの大事さを改めて実感。
トラブルが発生した時、焦りや絶望が容赦なく襲いかかるが、冷静に考え、時には見知らぬ人にも頼ってみよう。日本人だからフランス人だからとバイアスがあるかもしれないが、案外、そのバイアスは勝手に自分の中で形成されてしまったもの。今回、1人で参加したからこと、文化や言葉が違くても助け合うことができることを肌で感じられたことは大きい。
とはいえども、準備万端で展示に望むことがベスト。以下は、海外展示に初めて挑むデザイナー向けに、最低限、絶対に確認すべきチェックリスト。(気づいたら内容を更新するかも)これから海外で展示する人の成功を祈って。
当たり前だけども、おろそかにしがちな確認項目
1)作品の予備準備(どんなに慎重に持っていっても壊れることを念頭に置くこと)
2)電気を使う作品の場合:
- 作品の電圧規格は何ボルト・何アンペア?(ACアダプタを確認)
- 展示先の国の電圧規格は何ボルト・何アンペア?
- ACアダプタは最低でも3セット用意したか?
- 展示会場の電圧規格は何ボルト・何アンペア?
- 展示会場の電圧供給源はどの位置にあるか?延長コードはいるか・いらないのか?
3)部品の予備はあるか?少なくとも3セットは準備したか?
4)展示会場周辺のホームセンターの位置を調査しておく
- GoogleMapに位置情報を登録したか?
5)工具を持参する
- カッター
- ハサミ
- マスキングテープ
- はんだごて
- ハンダ
- ニッパー
- マジックペン
- ボンド
- グルーガン
- メジャー
- 長めの定規
- 絶縁テープ
- インパクトドライバー
- ネジ各種
- ドライバー